2013年04月18日

【考察】ジュラシック・パークについて考える〜恐竜を蘇らせることは可能か〜

私はジュラシック・パークシリーズが大好きで、定期的にDVDを見返しています。
ついにジュラシック・パーク4の製作が決定したというニュースを見た時は思わずガッツポーズをしました。



ジュラシック・パークの何が好きって、動く恐竜の姿を見ることが出来るところです。
ストーリーも好きですけど、映像を見ているだけでフィーバーできる。恐竜のような巨大な生き物にはロマンがあると思うのです。
しかし、どんなにロマンに満ち溢れていようとも、現代では決して生きた姿で拝むことは出来ない恐竜。
その恐竜がもし現代に蘇ったら・・・?というのがジュラシック・パークシリーズです。

ジュラシック・パークの世界では、恐竜の血を吸ったまま琥珀の中に閉じ込められた蚊から恐竜の血液を取りだし、DNAを復元して恐竜を蘇らせる、という手法が用いられています。
今回は、この手法の実現可能性について、また本当に恐竜を蘇らせることが出来るのか?ということについてちょっと考えてみました。
暇な人は追記からどうぞ。

●ジュラシック・パークで用いられている手法
映画中で説明されている恐竜の復元方法は以下の通りです。

1.琥珀に閉じ込められた蚊の中から、恐竜の血液を回収する
2.恐竜の血液からDNAを抽出、解析
3.DNAの足りない部分は、カエルのDNAで補う
4.完成させたゲノムを用いて恐竜を復元


・・・以上です。本当は4以降のプロセスが一番重要なんですが、そこについては一切触れられていませんでした。

●ジュラシック・パークの手法は現実的に可能か?
結論から言えば、ちょっと苦しいです。理由は以下の通り。

@DNAの半減期はおよそ500年なので、血液からDNAを回収するのが難しい
Aカエルと恐竜は遺伝的に離れているので、カエルのDNAで恐竜のDNAを補うのは無理があるのでは?
B恐竜のゲノム合成を受け付けるレベルの近縁種はいるのか?
C誰が恐竜の卵を産むのか?


@DNAの半減期はおよそ500年なので、血液からDNAを回収するのが難しい
去年、ニュージーランドの科学者たちによって、DNAの半減期はおよそ500年であるということが発覚しました。(Nature:DNA has a 521-year half-life
つまり、DNAは何万年もの時を超えて存在することは出来ないということです。
冷凍されている状態ではない琥珀中に含まれるDNAなどは、確実に壊れているでしょう。
(冷凍状態にあったものなら多少は可能性がありますが、低温下であってもDNAの破壊は進むので、厳しいことに変わりはありません)

Aカエルと恐竜は遺伝的に離れているので、カエルのDNAで恐竜のDNAを補うのは無理があるのでは?
これは一番の謎なのですが、恐竜のDNAを補うのに、なぜかカエルのDNAを使っています。
恐竜は(一応)爬虫類、カエルは両生類です。一見似通っているように見えても、遺伝的にはかなり離れているはずです。
よく言われるように、DNAは生命の設計図です。あべこべな設計図では機能することが出来ません。
エンジンだけジープのものに変えた設計図で作ったトラックは走るかもしれませんが、トラックではなく飛行機であれば、飛ばないでしょう。

おそらく、カエルにした理由は、「DNAの補充に使用したカエルが個体数によって性別を変化させる種であり、そのDNAを受け継いだパークの恐竜たちが、性別を変化させることによって自然繁殖するようになった(パーク内の恐竜は全てメスで揃えていたはずだった)」というストーリー展開にしたかったからだと思いますが・・・

やっぱり現実的には無理があるよなぁ、と思います;;
一部の爬虫類の中には、孵化時の温度によって性決定がなされる種も存在するので、そっちの方を使った方がよりリアルだったのではないでしょうか。

B恐竜のゲノム合成を受け付けるレベルの近縁種はいるのか?
実は、一番難しいのが3→4の過程(DNAからゲノムの作成)です。
これについては、近年になってようやく技術的な活路が見出されつつあります。

DNAとゲノムは混同しされがちですが、実際には少し違います。
ゲノムとは、遺伝情報の総体を指す概念のことをいいます。まあ、正確に言うとそうなんですけど、実際の語用としては、DNAをつなぎ合わせた一本の長いヒモ、という認識で使われることが多いです。(あくまで実験上の使用例ですが)

ここでは、
DNA→パーツ
ゲノム→パーツをつなぎ合わせた一本のヒモ
染色体→ヒモを折りたたんで二本一セットにまとめたもの 

として考えます。

ジュラシック・パーク公開当時は、パーツである短いDNAを合成する技術はすでに確立していました。
PCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)という原理を利用した技術で、バイオの世界では一般的に使われる手法です。
ただ、PCRによって合成できる長さには限りがあります。せいぜい数千塩基対しか合成できません。(長さの短いインフルエンザウイルスのゲノムでさえ、180万塩基対の長さを持っています。)
つまり、小さなパーツは作れても、それを組み立てて一本のゲノムにすることが出来なかったのです。

それが、最近になってパーツ同士を繋げて一本のゲノムにする方法が発見されました。
2003年にベンダー博士という人が、大腸菌の中にDNA断片をえいやっ!と突っ込んだら、なんか勝手に大腸菌がDNAを繋げてゲノムにしてくれたよ!という方法を見つけ(ベンダー氏の論文)、
2005年には、またまたベンダー博士が酵母菌を、慶応大学の教授が枯草菌をそれぞれ用いて、より長いゲノムの合成に成功しました。(慶応大学教授の記事

ただ、ここまでだと、単にゲノムのヒモを作っただけにすぎません。
実際の細胞の中では、ゲノムは一本のヒモではなく、ヒストンタンパクという輪ゴムのような働きをするタンパク質によってくるくるっとまとめられ、二本でひとつのセットになっています。
これがいわゆる、染色体という奴です。
なんでわざわざくるくるにまとめられるかというと、ゲノムはあほみたいに長いので、そのままだと押入れ(細胞核)に入らないからです。

じゃあ染色体を作るにはどうしたらいいの!?っていうところで、またベンダー博士がやってくれました。
2010年の春のことです。
ベンダー博士は、Mycoplasma mycoides という細菌のゲノムを人工合成した後、Mycoplasma capricolumというお仲間の細菌にえいやぁ!と突っ込んでみました。
するとどうでしょう、M.capricolumの中で、染色体がM.mycoidesに置き換わり、M.capricolumだったはずの細胞がM.mycoidesに変身してしまったというのです。(ベンダー氏の論文2010
しかも変身したまま普通に細胞増殖も出来たらしい。
(哺乳類で言えば、ゾウの細胞にマンモスのゲノムを突っ込んだら、ゾウの細胞ががマンモスの細胞に変身したよ、みたいな。)
この細胞の変換を生殖細胞で出来れば、例えばゾウの細胞からマンモスの卵細胞、あるいは精子が作れることになります。

ただし、ここで生じるのがB恐竜のゲノム合成を受け付けるレベルの近縁種はいるのか?という問題です。
ベンダー博士が用いたM.mycoidesM.capricolumは非常に似通った近縁種であり、しかもマイコプラズマという細菌は非常に短いゲノムの持ち主です。
元々細菌のような単純な構造の生物は、遺伝子の変換を受け付けやすい(要するに変身しやすい)という特徴があります。
(例えば細菌より短いゲノムを持つウィルスはころころ遺伝子を変えます。インフルエンザの予防注射を毎年受けなければならないのは、一年単位でウィルスが遺伝子改変してしまうからです。)

複数の細胞が存在する多細胞生物で、恐竜のような複雑な構造の生物の細胞に変身できる細胞を持った近縁種ははたして存在するのか。
例え恐竜のゲノムを合成することが出来たとしても、恐竜のゲノムを受け入れてくれる細胞を持った、恐竜に非常に近い生物が存在しなければ、この手法は使えません。

現時点で一番近いのは鳥類になりますが・・・・うーん、たぶん無理でしょうね・・・;;

C誰が恐竜の卵を産むのか?
さて、映画では言及されていない、最も難関な問題がこれです。
@〜Bの問題をクリアし、無時に恐竜の受精卵ができたと仮定しましょう。しかし、その受精卵を移植する「代理母」はどの生物を使えばいいのでしょう?

言うまでもなく、恐竜は現存の生物を凌駕する巨体の持ち主です。
その巨大な卵を身に宿し、無時に出産してくれる生物は現代にいるでしょうか。恐竜は卵生なので、卵生の生物を使わなければなりません。
大型の鳥類か、もしくはコモドオオトカゲのような大型の爬虫類を使うのが唯一の方法になりますが、いくら彼らが大型の生物だといっても、自分の何倍もの大きさのT-レックスの卵を無事に生み落せるとは思えません。

絶滅した生物を蘇らせようと考えた場合、一番のネックになるのはこの代理母問題なのです。
近年巷ではマンモス再生計画が注目されていますが、マンモスは実は現在のゾウとさほど体格が変わらず、この代理母問題をクリアするだろうと考えられているため、再生計画が始動したのです。

●もし恐竜を作るなら・・・再生ではなく、品種改良?
上記までで、残念ながら現在の技術を用いても恐竜を甦らせることは難しいという結論になりました。
しかし、これはあくまで「恐竜を蘇らせよう」と考えた場合であり、「甦らせるのではなく、恐竜に近い生物を新しく生み出す」という方向性ならいけるかもしれません。
つまりは、遺伝子操作による品種改良です。

ベンダー博士のような、試験管の中で一からゲノムを合成し、そのゲノムを他の生物のゲノムと置き換えるという方法ではなく、単純に、今いる生物の一部分の遺伝子だけをちょこっと操作する、という作業なら、現在はごく普通に行われています。
例えば、オワンクラゲの持つ蛍光タンパク質(GFP)を遺伝子挿入された“光るサル”も今では生まれています。(慶応大チームがサルの遺伝子組み換え成功、霊長類で初
また、チワワからドーベルマンまで様々な個体サイズを持つ犬に関しては、わずかな遺伝子の違いでサイズが大型化することが分かっています。

コモドオトカゲのような、比較的恐竜に近い外見を持った生物の遺伝子を解析し、何世代かに渡ってその遺伝子を少しずつ改変させていけば、(外見上)恐竜に近い生物を生み出すことが出来るかもしれません。
ただ、この辺は倫理的な問題が浮上してきますので、可能であるとしてもこのような実験は行うことが出来ないと思いますが・・・(光るサルなどは、病気の解明のために生み出されています)
ジュラシック・パークのハモンド氏のようなお金持ちの人が、個人的にこっそり研究する分には出来るかもしれませんが、国や企業が大手を振って研究するのは無理でしょうね。

恐竜復活のロマンは、実現が不可能であるからこそのロマンなのです。
・・・ということを考えると、夢を見させてくれるジュラシック・パークがより一層好きになりました。

以上、頑張ったわりに身の無い考察でしたが、お読みいただきありがとうございます。





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posted by Hentai at 01:21 | TrackBack(0) | 恐竜・怪獣映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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